早く縫うよりも、安定したものを縫う確実さの意味
縫製工場は海外産がほとんどになって、昭和のかつてはあれほどにたくさんあった、縫製工場も今は激減しています。
以前は、縫い方が分からなくても、お母さんが習っていたり、隣のお姉さんや先輩が知っていたりと、教えてくれる人が多かった時代でした。
現在は、モノづくり日本は少しずつ職人さんも戻っていますが、失われた技術は途方もなくて、無残な状況下です。
ところで、工場の人の手の動かし方は、とんでもなく早いですよね?
見もしないで縫うのか!とびっくりしていたら、まじめに目をつぶって縫ってくれるのを見たこともあります。
彼女たちの技術はとんでもなくレベルが高いです。
自分流に練習していたら、何時かはあんな風になれるはずだと思っているかもしれないですが、そこは自己流には限界があって、絶対領域には自分だけで入ることが出来ません。
工場の生産方式は、「ラインと呼ばれるもので、工程の順番に並んで、一つを縫ったらその先の作業は次の人が行う、
いわゆる、その人の能力を発揮しやすい、得意とする分野別の分業制になっています。
縫製工場の縫い子さんには、不得意な部分は縫えない限界値がけっこうある
工場に最初に就職すると、簡単な場所を縫って個性や性格を判断されます。
アイロンの作業へとにかく突っ込む工場があれば、ダーツを縫わせる工場もあったり、そのやり方判断の仕方は管理者の手腕次第です。しかし、とにかく就職した人の性格を見抜き、特性の活きる場所で即戦力になってもらうために目を光らせています。
ところが、毎日同じ場所を縫うと、けっこう難しい物でも1ヵ月でそこそこ縫えるようになり、3か月もするとプロらしい縫い方が出来ます。
ダーツだけしか縫わない人は、次の工程の脇縫いの手伝いまでしかしません。
ベルトの得意な人が、ベルトの縫い付けだけをします。
ロックの大好きな人は、裏地表地、関わらずすべて一括してロックをかけるとか。
ベルトを縫う人がダーツに手出しをすると、ベルトが縫いつけられない大きさになってしまうので、ダーツも専門の人に任されています。
このように、全てが工場の威力を発揮する歯車として機能して、初めて量産工場は儲けが出ます。
それだけに耐震の部分は弱くて、同じ場所しか縫えない人が多いと、
- 難しい物や
- 進み難いものになった時に、
- アウトーーー!となってしまうリスクを常に抱えています。
丁寧に間違わずに縫うためには、訓練が不可欠です。
しかし、量産工場でさえも、自力で先輩のを見て盗んでも、不得意分野には適応しかねてしまうのが洋裁です。
見よう真似でも出来ないほど、自分の不得意な部分への攻略する方法を知らないと、絶対領域の手前にさえも行けないことを知って欲しいのです。
洋裁を独学で学ぶあなたは、たった一人だから迷宮に入りやすい
独学で洋裁に挑むあなたは、たった一人で探検に行くようなものですね。
誰かと一緒に相談しながら進むのであれば。その人が洋裁に詳しくなくても、状況を説明しようとするだけであなたの頭脳はクリーンになります。
答えを自分で導き出しやすくなります。
大規模な量産工場でも、丸縫いの出来る人は1名か2名しかいません。
1着の全ての工程を縫うことを『丸縫い』と言います。
丸縫いとは、上記のように縫う作業のことだけで、裁断までは入りません。
あなたがおうちで一人で1着の全部を完成させるのは、裁断も込みの話ですから、洋裁を独学で勉強するのがどれだけ難しいの?という話なのです。
服を縫うことに部分的でも強化訓練を受けている人であっても、自分の担当部署以外を縫わせると、全く使い物にならないばかりか、烈火のごとく怒りだすことも多いです。
ミシンを相手に生産の業務に耐えている人は、気持ちのはっきりした人が多いので、自分が嫌なことをしたくないと言える人が多いからです。
私は性格上、好奇心を押さえきれない方なので、違う場所を縫うことは大歓迎でしたが、そういう人は本当に少なかったです。
つまり、縫うことに慣れていても、苦手なものを工期のためにまで縫いたくないとう反発の壁はかなり高と言えます。
ところで、皆さんは苦手なところも自分で乗り越えて、既製品のようなきりっとした仕上がりにしたいのでしょう?
これはとっても大変な事なんだと、どうかご理解いただけないでしょうか。
独学で自分を鍛えていくのも良いのですが、常識と思われていることが、全く作れない縫い方であることも多くあるため、
洋裁の独学だけは、お勧めできない理由があります。
独学を悩ませる洋裁の常識がどうして出来上がってしまったのか
「しつけで縫ってからミシンをかければいい」
「パイピングで包んで縫って…」
「ダブルガーゼの優しさを…」
「カーブはゆっくり進めれば大丈夫…」
この神話のように語られていることが、実は現場では全く使われてない方法なのだということを、多くの方は知りません。
それは本がそういうことを書いてないからであり、多くの初心者向けの本のデザインは見返しではなく、バイヤステープを使っているからです。
なぜでしょう?
ずいぶん考えてきたのですが、接着芯は生地との相性を合わせる必要があり、多少なりとも知識が必要です。
バイヤステープは出来上がったものが売ってますので、その場で材料が完全にそろうんですよね。
たとえ縫うのが大変であったとしても、です。
バイヤステープと聞いただけで、プロの方ではげんなりするし、何で見返しじゃダメなの?と文句も出てしまう曲者です。
しかし、初心者向けの本の作り方にはいとも簡単に縫えるように書いてあります。
この神話がある限り、挫折するのは自分がぶきっちょだからだ
という自責を止めることが出来ません。
精神論では縫えないのが洋裁です。
もちろん 縫うためにはマインドが必要ですが、それはコツや理論が理解できてこそのマインドです。
やみくもに突き進むための精神論では、絶対に生地は言うことを聞いてくれないですし、またミシンも手足のようには動きません。
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