柄合わせを格好よくできる方法
柄合わせをするときに、一定のコツを守って考えると、縫う負担を軽減でき、出来上りも美しくなります。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では、柄合わせの基礎的な考え方を279回目より取り上げています。
柄を間違わずに裁断できる型紙の印付けの方法から、柄を左右均等に縫う方法を解説しています。
この記事では大まかですが、柄を合わせる時にどこから決めたらいいのか、何から決定し、どういう確認の仕方で決めていくのかをざっとご説明します。
柄合わせは大きく生地を広げて考える
柄合わせに気を取られ過ぎると、俯瞰した状態を確認しそこなうことがあります。
大きく生地を広げ、柄に左右がないか、天地(上下がある場合に、天地があるという言い方をします)がないかどうか、柄のつながり、柄の方向をじっくり判断します。
- 単なるチェックや花柄だと思っていたら、左右にわずかな差があった
- チェックや花の柄が、天地(上下に向きがある)で少しだけ違っていた
などの、最初に気がつく生地の特徴を把握して、
バストラインにどの柄が来るとスッキリするのかを考慮した上で
裾の柄がどこになると、縫う時にあまり負担がないのかな?という視点も加えて柄の位置を決定します。
柄合わせは、中心線を決める
柄合わせをするときは、中心柄をどれにするのかで大きく印象が変わります。
後ろ中心、前中心に柄を通して、前中心明きがあっても、柄が丁寧に重なるように作ると、一枚の絵画のような仕上がりになり、ひと際クオリティーがアップします。
量産の商品は、ほぼ横ラインを合わせることしかしていない品物が多いため、柄がバッチリ合わせてある作品は、街中で遠くから見ても違和感を感じさせない自然さが、ふと気になって二度見してしまったりして、その自然さにほっこりすることがあります。
このページは前中心柄の不具合の点がご理解いただけるかと思います。
可愛いチェックの柄が沢山あって、自分の好みが幾つも見つかり、お値段もお手頃、サイズも豊富。
購買欲を意欲をそそりますよね♪
各柄ごとに、前中心の柄が合っていなくて(ンン?)となる感じ、気にし始めると、とても気になったり、
こっちの柄は合っているだーと変に納得したり。
気にしなきゃ全然気にもならないですけどね(笑)
私も、自分が普段着るものは、柄合わせなど気にしないで購入するし、着用するのも躊躇いはありません。
柄が合ってない服を、悪い、いけないと否定する気持ちはないです。
ただ、柄を正確に合わせてあるだけで、クオリティーは全く違う次元に見えるので、ちゃんと仕立てた分だけ、他者と格差をつけることが出来ますというお話です。
個人で販売をするなら、柄合わせを完璧にすると目立てる
この様な既製品が多く市場には出回っています。
生地の柄を生かして、柄があるべき状態に丁寧に仕上がっていると、目に優しく、感情に逆らわないことが目立って、何が気になったのだろうかと二度見してしまったりします。
柄合わせをした作品は目に優しく、気持ちが穏やかになるため、縫製のことが良く知らないお客様にも一目瞭然にご理解いただけるので、好印象を得られるだけでなく、作品によりご満足していただくことが可能です。
そういう意味で、個人でネットで作品を販売する場合に、柄合わせが完璧に出来るスキルは強い味方です。
企業が手が回らないところを攻め、ニッチなシェアを獲得することが、個人販売において必須であると言えましょう。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では、ネット販売できるものを縫えるようになることを目的としています。
残り回数が少なくなってでも、どうしても柄合わせを講座に入れたのは、柄合わせが企業に対抗するための必須条件であるからです。
間違えない柄合わせの方法
柄合わせを必要とする作品を縫う時に、心理的に負担になることは大まかに分けて2つにまとめられます。
- 合わせたはずの柄が、実際に縫う時になってみたら間違っていて、縫い合わせそのものが出来ない
- 柄合わせをしたはずだが、縫う時にズレてしまい、柄が微妙に狂ってくる
柄合わせには、2つの要素があります。
要は、
- 柄に合わせて縫える技術はあるが、裁断が狂っていて縫っても柄が合わせられない場合が①です。
- 裁断の柄合わせは正解なのだが、縫い合わせるのに苦労してしまう場合は②です。
②の、縫い合わせる技術的な問題は、練習やコツを上達させて、ミシンと上手に綱引きをすることで緩和できます。
- 2枚の生地をどのように引っ張り合いをさせて、
- ミシンが起こすズレをコントロールし、
- 自分の方がミシンよりも主導権を取るのか
上記の3点は、「洋裁が自宅で学べる365回講座」でお教えしたい主たる課題です。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では、受講していただく際に課題提出方式ではなく、私が1着を縫い上げる全工程を収録したものを見ていただくスタンスです。
私たちミシンを職業として生きている者にとって、縫いながら会話することは集中力の欠如ですから、絶対に禁じられている事です。
独り言は有りですが、誰かに説明しながら縫う作業を同時進行で行うことは、全くやったことがないので不慣れです。
収録しながら作業の手の動きを言葉で解説し、台本はありません。
撮影の当初は、台本を作ろうとしたり、収録と吹き込みを別にしたり、ずいぶん苦労しました。
しかし、その時にどういう目的で、何に注意を払って縫うのかを解説するのは、その時の一期一会のチャンスでしかご説明できないものがあり、ぶっつけ本番にすることで情報量をより多くすることにしました。
その結果、集中力が欠如しているために、凡ミスも起こしやすくなり、気にしてたはずだけどやれてないミスなど、トラブルが多発します。
そもそもトラブルが多発するのが洋裁であり、服作りは特に小物と違って工程長いので、トラブルも大量発生します。
どんなに経験を積んでいても、トラブルがない縫製は存在しません。
トラブルが拡大し、迷走になって負のスパイラルに陥らないようにするために、情報の引き出しを多く持ち、情報を整理できて初めて使えるのがスキルです。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では失敗したところをほどく意味や目的、状況に合わせてどこまでほどくのか、2枚の生地がズレないようにするために、どういう手の使い方をするのかを繰り返しその場その場のトラブルごとにお伝えしています。
2枚の生地を全くズラさないように縫うのは、熟練になっても難しいときも多くあるので、ノウハウはあっても毎回が試練であり、絶対の法則はありません。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」が、長時間にわたってお教えしているのは、絶対がない部分をお伝えするためでもあり、情報のシャワーを浴びることで、皆さんがテキストよりも多くの情報を得ていただけるカリキュラムにしたいからです。
どうにもならない問題は、当然ながら、①の裁断がそもそも間違ってしまうケースです。
どんなに技術があったとしても、裁断された生地の柄そのものが狂っていたら、柄を修正することはミシンには不可能です。
柄を完全に無視して作るか、裁ち直し(裁断し直し)しか道はないわけです。
柄合わせは手順の把握に過ぎず、洋裁の素人でも簡単に正しい裁断をすることも可能
柄合わせというと、とても難しく考えてしまうかもしれないですが、柄を合わせるには手順があります。
後ろ中心を合わせ、裾を決め、柄の状態を把握して、全体の型紙にその指令を伝えていく。
単にこれだけのことなので、そんなに難しく考えなくてもチェックの柄合わせなどは、手順を理解しさえすれば誰でも簡単にできるようになります。
手順が理解できれば、もっと大きなゴージャスな柄を前中心の重なりで合わるなど、応用も余裕が出て、作品のグレードもぐっと上がった物が作れるようになります。
沈着冷静に、チェックシートのように柄合わせの手順を踏んでいけばいいだけなので、それほど難しくありません。
量産工場の裁断をする人は、ミシンを縫えない人も多くいて、逆に縫う知識のある方が間違えてしまいがちというくらい、裁断は手順の世界です。
私の夫の柄合わせは、私よりも上手で優秀な裁断をしてくれますが、夫はそもそも調理師であり(笑)、洋裁とは別の畑の人間です。
柄合わせにおいて必要なのは、型紙の理解と手順方法
柄合わせをするために必要なもの何なのかは、一言で言い切ることが出来ます。
型紙(パターン)がどういう成り立ちをしているのかの、基礎的な理解です。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では、ブラウスの書き方、原型の書き方、袖の型紙、衿の型紙など、数回にわたり製図方法について解説しています。
服の製図を、全部自分でやれるようになるための講義ではありません。
改造したりデザインの変化を自分の力でやれるようになるために、型紙の知識を身に付ける目的から、型紙の書き方の基本をお教えしています。
型紙について、どうしてその曲線になるのか、直線であるのかの意味を知ってもらい、縫い合わせる線を理解できるようになると、具体的に自分の求めるデザインに自分の力で改造することが可能になっていきます。
- 丸首のデザインを衿付きにする、
- 被りのデザインを前明きにする、
- 袖なしを好きな長さの袖ありにするなど
手元にある型紙から、自在にデザインを変化させることが可能になりますので、楽しさが倍増します。
市販の型紙を何倍にも使い倒せるので、お得感も十分お感じになることでしょう。
デザインを自分に合わせて改良する自由度は、デザイナーの楽しみでもあります。
お子さんと一緒にデザインを考えて、それが服として実現し、着用できる喜びを共有することが出来ます。
そのような喜びを実感していただくために「洋裁が自宅で学べる365回講座」は開設しました。
型紙の理解が深まれば、柄合わせも狂いや間違いを起こさなくなります。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では、チェックの柄合わせを、台衿付きシャツカラーの作り方で解説しています。
柄合わせに必要な手順も1からお教えします。
台衿付きシャツカラーも型紙から理解することで、トラブルを防ぐ
私は画像を探すときに、嫌になるほど台衿付きシャツカラーばかり見つかるので、笑いだしてしまいました。
老若男女問わず、どんな人にも愛され、そして受け継がれていく永遠のデザインが台衿付きシャツカラーだと言えますよね。
ところが台衿付きシャツカラーは大変難しいので、一筋縄では縫えません。
「洋裁が自宅で学べる365回講座」では台衿付きシャツカラーの型紙の書き方から解説し、裁断、縫い方の小川流失敗しない縫いの順番をお伝えしています。
DVDマニュアルでは台衿付きシャツカラーの講座では解説しきれない部分を掘り下げていきますが、「洋裁が自宅で学べる365回講座」だけでも、小川流の縫い方にきっと驚かれることでしょう。
部品が多くなるにつれ、逆転方式でトラブルを未然防ぐ知恵が、有効手段になります。
台衿付きシャツカラーは、シャツ衿と台衿、身頃と、3つを寸分も狂わせずに縫い合わせないとなりませんから、難しいのです。
難しい場合は、複雑な部分を少なくします。
1つずつ完全な形にして、また1つ増やすようにして手順を組み直すと、難易度を容易いものに変えることが出来ます。
我々職人は、どんな素材でも、どんなデザインでも縫う力がある訳ではありません。
失敗を予測して、失敗を修正する微調整の能力に長けている者が、熟練者と言えるでしょう。
アスリートが1度目の失敗から修正し、2度目で完璧に捉えていくのを、TVなどで目にしますよね。
私どもの縫製業でも、同じです。
生地の質、デザインのクセなど、毎回違った試練に直面し、その度に適応した対処をして完成させていくことが、看板、腕前となります。
「出来ない」試練は、毎回です。
トラブルは常に起こりますが、トラブルを最小限にし、完成した服の仕上がりにトラブルがあった気配を感じさせないのがプロということです。
柄の合わせ方のお話が、すっかり長くなってしまいました。
台衿付きシャツカラーのお話は、また何かの機会に触れてみますね。
皆様のミシンlifeに、楽しさと夢の実現をお祈りしています。
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