こんにちは!洋裁が自宅で学べる365回講座の小川タカコです。
今回は、洋裁が自宅で学べる365回講座を受講してくださっている方からの、ご質問にお答えします。
裁ちばさみは、どのくらいの大きさが使いやすいのか?というご質問をいただきました。
裁ちばさみよりもローラー式の回転場の方が使いやすいのではないか?
裁断の時に上手くカットできないお悩みのお声を聴くことが多くあります。
裁断がズレてしまう、思うカーブに沿って切れないときなどは、イライラします。
出来上がりも目的の大きさ、寸法にならないことでトラブルが大発生して、すっきした仕上がりになりません。
お悩みも当然多いですよね。プロになっても、裁断面での失敗はミシンでは改善できないため、裁断の部署の人の責任は重大です。
私もローラー式のカッターは大小、二つ揃えてます。
このカッターを使いこなそうと、躍起になったことがあります。
ところが、ローラー式のカッターはキワキワをカットするのが難しい上に、マットからはみ出してしまうと使えないので、マットをずらしながら裁断するか、大きく広げられる大きさのマットを買うかしか選択肢はないわけです。
しかも。ハサミは洋裁を行っていくうえで、欠かせない相棒です。
衿ぐりや難しい所の縫い代を揃えたり、切り落としたり、ギリギリまでハサミを入れる時など、非常に重要な部分でハサミの感触を手が知ってないと、危なっかしくて使えない場面が多くあります。
裁断だけの場面でも、合印に入れるノッチ(縫い代の端に入れる3mm程度の切り込み)は、ハサミじゃないと入れられません。
カッターを使うためにマットをあっちこっちにズラしながらやると、生地そのものがズレてしまう
カッターでカットする面が、型紙の急なカーブには特にギリギリに添わせにくい
裁断したものにノッチ(合印)を入れるのを、裁断しながら同時進行しないと、合印忘れをしやすい
私はこのような点で、ロータリーカッターの実用化は、早い段階で諦めました。
ずぼらな性格の私には、面倒くさいものへの対処は好みではない上に、ノッチを入れる時にロータリーカッターからハサミに持ち替えなければならないことなど、仕事が早くできる要素が見つけられなかったからです。
ただ。
裁断はあくまでも、型紙通りに裁断できるかどうかが求められます。
ロータリーカッターを使うのか、裁ちばさみを使うのかの問題ではなく、きちんとした裁断が出来る方法であれば、どんなものを使おうと関係ありません。
ロータリーカッターが使い慣れているならば、全然それでOKですので、誤解しないでくださいね。
裁ちばさみを上手に使い、難しい所で味方になる裁ちばさみの大きさ
裁ちばさみに戻って考えた場合に、裁ちばさみは重くて扱いにくい点が、ハサミのブレになってしまう重大な欠点があります。
今までに何度も書いているので、ご存知な方は多いかもしれないですが、私の夫は調理師から裁断の現場に入った人間です。
男の力もあり、鍋を振ったり、レストランの重たい寸胴鍋や、各店舗に配送するソースなどの非常に重い荷物を運搬する業務も経験していましたので、腕力は人よりも秀でています。
そんな夫でも、裁ちばさみが長くて重いと、切る時にハサミの先端にブレが出てしまい、ズレが生じたり、縫い代の先端がジャキジャキになってしまうなどトラブルが起きてしまうので、刃の短いものしか使いこなせませんでした。
裁ちばさみの長さの測り方
裁ちばさみは全長何cmという測り方をします。
当店で使用している裁ちばさみは、3種類の大きさがあります。
左が当店が愛用している裁ちばさみになります。
真ん中の一番茶色いのは、我が母校、文化服装学院で入学の時に教材の一部で買ったものです。
現在のこの裁ちばさみは、紙切り用として使っています。
鋼がなまくらで、砥いでも価値がないんですね…。
このように、同じような裁ちばさみに見えても、実際の価値は全く違います。
ネットで検索しても全長24cmの裁ちばさみが、洋裁には適していると書いてあるようですし、使いやすく、軽いので私どもでは愛用しています。
ちなみに一番上の大きいのが、ごく普通に店舗で買ったものですが、これは本当にブレるので使いにくいです。
裁ちばさみがブレると困る理由
裁ちばさみは、難しい場面でも重大な任務を果たしてくれます。
- 衿ぐりのカットのとき、
- 中縫いのカーブの部分への切り込み、
- イッテコイなど生地を真逆に縫い返す時など
ハサミの切れ味、切る時の力加減を手が熟知してないと、ほんのわずかな切り込みに、うっかり力が入りすぎてザックリと切ってはならない場所をやっちゃうこともないわけではありません。
ハサミの切れる感覚を手が熟知して、使い慣れた物でなければ、仕事になりません。
洋裁は繊細な部分を強く意識して作業をしないと、仕上がりが良くなることがないですから、ハサミという大事な相棒をおざなりにできません。
裁ちばさみの上手で失敗しない使い方
洋裁が自宅で学べる365回講座では、裁ちばさみの使い方を度々取り上げています。
- 裁断するときの裁ちばさみの使いやすい位置
- 裁断の時の裁ちばさみをどのように動かすと、ズレが少ないのか
- 縫い代を裁ちばさみでカットするときに、
どのように手を使って、縫い代の部分を持つのか。 - 縫い代に裁ちばさみを入れる長さ、距離、ハサミの方向、
- 縫い代を切る時の裁ちばさみのどの位置を使うのか
裁ちばさみはミシンと同じくらい大事な道具であり、裁ちばさみと仲良くなれなければ、洋裁の限界の壁はすぐ目の前にあるとも言えます。
裁断するとき、裁ちばさみをどのように使うのかを最初の月では、詳しく説明しています。
そして回を追うごとに、裁ちばさみを使う場面も多くなっていきます。
洋裁が自宅で学べる365回講座の動画は全工程を収録するので、その度ごとに必要な裁ちばさみの使い方、裁ちばさみの歯の位置をどこでやると滑らかに動かせるのかなど、細かく解説しています。
裁ちばさみは、同じ使い方をするのではなく、目的に合わせて歯の位置を変化させ、厚みに合わせた使い方が必要だからです。
裁ちばさみを手に馴染ませることで、トラブルを防止する
裁ちばさみの場合、ミシンとは厚みに適応した使い方でない場合に起こるトラブルは、比較になりません。
ミシンの場合は、針折れなどで生地が傷むことがありますが、よっぽどでない限りほどくことが可能です。
ですが、裁ちばさみの場合は、いったん切ってしまったら生地は二度と修繕できません。
切り離してしまったものを、無かったことにはできないので、裁ちばさみを手に馴染ませ、裁ちばさみの僅かな手ごたえに常に敏感である手になっている必要があります。
裁ちばさみからの切れる時の衝撃を、手が意識して敏感に受け取っていると、余計な分を切りそうな時に反応してくれます。
1枚しか切ってないはずなのに、2枚分の手ごたえを感じて、刃先が入る手前でギリギリ躱せるという、リスク回避が出来るようにならないと、複雑な部品が多くなったデザインは、なかなか問題の多発を防げません。
そのように裁ちばさみを常に自分なりの支配下におき、その動き、刃のかみ合わせ具合を管理するとなると、切れ味の良い裁ちばさみである必要があります。
裁ちばさみがなまくらだと、腕が落ちる
裁ちばさみがなまくらで、切れ味が悪いものを使うと、上記のように繊細に生地が切れる衝撃を手が受け取ることが出来ません。
この様な安全性を目的とした裁ちばさみは、砥ぎ直しの面でも、重さの面でも足りません。
裁ちばさみは重さが役目の一つでもあるからです。
重いと刃先がブレて、思うように仕事が出来ないと冒頭に書きました。
しかし、重さがあるゆえに生地の切れる時の衝撃を受け止め、その重さを利用して織り糸に沿って裁断することも可能になります。
重さがありながら、使いやすい長さの裁ちばさみが有能であるということです。
裁ちばさみは切れる時の体感を身に付けて使いこなす
美容院で切れ味の良いハサミでカットしてくれる、あのシャキシャキした軽快な歯音を思い出してください。
なまくらなハサミでご自身のカットをされたら、怒り心頭ですよね。
シャープで切れ味の良いもので仕事をする美容師さんに信頼が集まるのは、カットのデザインよりも前に、仕事をする心意気がちゃんとしているかどうかが重要だからでしょう。
生地は織り糸の集合体です。
裁ちばさみが断つ瞬間の、織り糸が髪の1本と同じように、裁断するときの感覚が手に伝わってくれる裁ちばさみである必要があります。
プラスチックの安全な設計のハサミではなく、砥ぎに出せる鋼の裁ちばさみを使いましょう。
切れ味の良いもので、ゆっくり生地に刃を入れるときの感覚を身に付けていき、切れなくなったら1枚切れても2枚切れても同じに、グイグイ力を入れないとならないとか、切れた先がシャープに切り落とせないなど、状況が悪くなったら研ぎに出すべきです。
私は文化服装学院の学生だった時から、裁ちばさみと小バサミの研ぎをするのは、怠ったことがありません。
切れないハサミで行う作業はとっても嫌な気分になるので、お金がないときでも研ぎ代はケチらないことにしていました。
裁ちばさみのメーカー
裁ちばさみのおすすめのメーカーは何処なのか?と質問がありましたが。。。
こればっかりは、私には何とも言えません。
私の使っている物で、一番気に入っているのは小バサミですが、同じものを求める手段を知りません。
裁ちばさみの研ぎならこちら
裁ちばさみの研ぎに関しては、宮城に住んでいたころから「鋏研磨研究会・ラリー」さんへお願いしています。
スーパーのところに看板を出しているような研ぎ屋さんもありますが、一時切れるようになっても、長く持ちません。
ハサミ研ぎに関しては、学生の頃から自分の思うような研磨になってないと我慢がならない性格なので、非常に私の研磨に対しての要求はうるさいです。
サンプル屋の当時から、薄物を扱うことを主にしてきました。
透けるような薄地も切れて、しかもウールの縫い代を厚いところを切り落とすなどしても、刃こぼれのしない研ぎを求めるというと、お手上げですとあちこちで断られました。
「鋏研磨研究会・ラリー」さんは仕事が丁寧です。
求めるものになっているかどうか、実に細やかな対応をしてくださり、その技術力は安定しています。
一回研ぎに出すと、猛烈に使っても半年以上、上手くいくと一年は持つくらいに、砥げている裁ちばさみは息が長いです。
なまくらな研ぎをしてもらった裁ちばさみは、元が良くてもすぐに切れなくなります。
研ぎ氏の腕が良いと、裁ちばさみも生き生き仕事をしてくれます。
裁ちばさみ専門店で、砥ぎもしてくれるお店もあるようです。
自分の売った商品の研ぎが出来ない販売店の物は、どうなのだろうと思ったりは致しますね。
以上、裁ちばさみについてです。
参考になることがあれば幸いです。
また、何かご質問などあればコメント欄などご利用になり、お問い合わせしてくださいませ。
専門外のことなど、お応えできないことは多くありますが、私の知っている事でしたらこのように記事に纏めるなどしてお答えしていきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
コメント
リクエストにお応えくださり、ありがとうございます。かゆいところに手が届く分かりやすい記事に大変感激しました。ハサミ研ぎをお願いできるお店を紹介してくださっているのもありがたいです。裁ちばさみ、さっそく24センチのものを注文しました。
ようやく最初のギャザースカートを作り、あとはゴムを通すだけになりました。子供サイズで作りましたので縫う距離が短いということもありますが、まち針を打たなくても教えていただいた手つきでやれば、本当に縫えることに驚いています。しかも、これまでまち針を打っていたときにはなかったくらい、ピッタリ合います。まち針を打っていないと他のことに気が配れるので、かえってきれいに縫えるのだなと、何か新たなステージに入った気持ちです。今まではまち針を外すこと、まち針を誤って縫ってしまわないことに気をとられていました。
ロックミシンも、いつもは地縫いの前にかけていましたが(私がこれまで見た本、型紙に付いてくる手順書はすべてこの段取りです)、今回は地縫いのあとに縫ってみました。縫い代1.5センチがあれば思ったほど苦労なくロックミシンで縫えますね。事前にロックをかけると布端がよく分からなくなり、何かスッキリしない気持ちで地縫いをしていましたが、これからはこのストレスから解放されそうです。
アップアップしないよう、新たなテキストと動画は1日に1個だけ見るようにしていますが、こちらの講座を受講し始めて、毎日が今までよりもずっと楽しくなりました。これまで疑問に思っていたこと、どうやっても上手くいかなかったこと…それが毎日毎日、どんどん謎解きされていって、テレビドラマよりも先生の動画の方がずっと面白いです。ついでに、日常のアイロンがけも、これも練習と上から下へ、織りと生地がどうなりたいのか考えながらかけるようにしたら、今までよりもずっと早く、簡単にかけられるようになりました。ハンカチなどは、一撫ででピシッとします。
これからも講座のテキストと動画、そして記事を楽しみにしております。