婦人服アパレルのサンプルを請負業をやっていた時の現場でのお話

ミシン アパレルの裏話

こんにちは。「ずぼらでパリコレ」洋裁が自宅で学べる365回講座の小川タカコです。

今回はアパレルの裏話で、「工場って怖い」っていうお題で、忙しいときの緊張感と、メーカーさんが大満足した答えについて書きました。

「工場の人は怖い」

1980年の初めですから、まだ不況の声はすれども、繁華街に賑わっており、ファッションも押して押して押しまくれの時代です。

肩幅の広いパッドスーツが流行ってました。

私が最初にアトリエに入った時、すごく怖い場所に来たんだと思いました。

スタッフの人たちの小バサミを離す時、ミシンに当たる音が大きくて、一々びっくりしたからです。

何か怒っているのかと感じるほど大きな音に思ったのですが、慣れてくるにしたがって、別に怒っているのではなくスピードを上げると、作業しながら小バサミを落とすように手から離すために、音が大きく反響するんだとわかるようになりました。

小バサミをわざわざ置く手間をかけず、手から離して、次の作業に入っちゃうと書いたら分かり易いでしょうか。

小バサミも刃こぼれするので、高い位置から落とすのはNGなのですが、ミシンの上で手に持つくらいであれば、ミシン台に置かないうちに手から放しても問題ないレベルなんですね。

当時は工業用のミシンに糸切り装置などついてなかったので、毎回縫うたびに小バサミで引き出したミシン糸を切り離してして、それをまた短く切り落とさなければならない二度手間で縫っていました。

それが当たり前でしたから、足踏みよりも機動力のあるミシンってすごいと、目をキラキラさせていたのでした(笑)

縫って最後まで来たら毎回、ミシン糸を引き出して小バサミを使って、また縫って小バサミで切る。
これを高速にやろうと思うと、小バサミをしょっちゅう使いますから、手から離す音もミシンの音が途切れるとガチャン!となる。

ガ、ガーー、ガーーーガーー!、ガチャン!
こんな感じの音が連続して、どの席からも聞こえてくるので、すごく緊張し差し迫った気持ちになったのを覚えています。

糸切りのミシンを買ったときは、疲労がすごく軽減されたので、ものすごくほっとしたのを覚えています。
家庭用ミシンにさえ自動糸切り機能がある時代ですから、ほんとうに時代の流れを感じますね。

メーカーがサンプル屋に来るときは、サンプル屋の正念場

アパレルメーカーの人も同じ思いをするようです。

工場に行くようなときにたまたま見学すると、スタッフの人が挨拶もそこそこに、すごく緊張した顔つきで ガー、ガーーー!ガチャン!と縫っているのを見て、

(怖いところだなぁ)と感じたというお話を、サンプル屋になって得意先に営業に行くようになってから聞くこともありました。

メーカーの人がサンプルを縫っている所に来るのは、けっこう過密なスケジュールになっているときに宅配で間に合わないものを手渡しで届けるなど、何か来なければならない緊急の理由があってくるわけです。

当然ですが、
サンプル屋としては爆風が吹き荒れている嵐の真っただ中で、超絶に忙しいわけです。

秒単位で縫う作業に追われている状況です。

私がサンプル専門のアトリエに勤めていた時にも、前にパタンナーの仕事をしたメーカーの先輩が、届け物に来てくれた時がありました。

箱詰めに入れ忘れたものを届けに来てくれたのですが、パタンナーがサンプルに必要なものを運ぶなんてことをしなきゃならないくらいに、状況は時間が切実に切羽詰まっていましたので、現場では激戦の真っ最中です。

企画室の人(デザイナーさんやパタンナー)が、何らかの荷物を工場側へ運ぶというのはごく稀です。
通常は男性が工場へ持っていき、女性は市場調査で街のファッションを調査する方向で動くことが、当時は多かったです。

どちらにせよ、極端な話をすれば、運送では時間的に間に合わないレベルまで追われているから、持っていかざるを得ない状況が起きたということです。

久しぶりに会った先輩ですが、挨拶する時間もろくにないし、遠くから手を振って後はずっとミシンに集中です。

スタッフの先輩たちも無駄なく働き続けて、今日中に仕上げるもの、残りの日数計算で仕上げなければならない数に対し、真剣に挑んでいました。

後から電話をもらって、「あの怖いところに勤めているの、大変でしょ?戻っておいで~」と有難い温情をもらったのですが、

それ!違うから!

あなたのメーカーの職出し(お仕事を出すことを職出しと言います)が、ギュー詰めに納期近くになってからガンガン出すから、こっちはあおりを受けて必死になっているんだからー。

パターンの仕上がりとか、生地が揃うまで時間がかかったなど、メーカー側の事情は分かっているけども、その事情と関係なく展示会を開きたいメーカー事情が、殺気立たせているんですよ~~( ノД`)シクシク…

これを言えない立場関係になったということを、痛烈に感じたものでした。

現場の緊張感や納期について、上手な言葉が浮かんでこなくて、その時の【必死さ=怖さ】が伝えられませんでした。

やっぱり、自分の看板になってからでないと、立場上言えないですよね(笑)
しかも切実になっているときは、もっとダメですね。

サンプルを自分で独立してやるようになって10年ほど過ぎる頃は、原宿や六本木などのメーカーさんに直接のお取引をもらっていました。

私は取引先に営業に行くスタンスでしたので、企画室の人と雑談をすることが多く、情報をたくさんいただいていました。

私が請け負うのはサンプルですから、話題はサンプルが量産になった時にどんなことが起こるか、もしくはサンプルを縫う時に問題がなかったかが、話題の焦点となります。

サンプルを縫ったなかで、量産になった時にトラブルが起こりそうなところを書き出してレポートにまとめて提出し、後日にお時間をもらって営業にも行き、さらに深く話し合うのです。

そんな中で他のサンプル工場さんのお話が出ることもありました。

スタッフが何人かいるようなアトリエになっているサンプル屋さんは、やっぱりすごい迫力で怖かったと聞いて、吹き出したことがありました。

何処だって必死ですからね(笑)

 

サンプルの下請けをしたとき

そういえば10年くらいしたとき、サンプルをメーカーから直接ではなく、サンプル屋さんから請け負ってみたこともありました。

もう場所は覚えてないですが、下町にある工場さんで、男性も数人いて女性のミシン場は20~30名くらいいたような記憶があります。

お電話で下請けを申し込んで、宅配で仕事をもらっていたのですが、台付きシャツカラーで失敗してしまい、

「そちらに私が行くので、ミシンを貸してくださったらお直しを自分でします」と申し込んだのでした。

あれは怖かったです(;^_^A
初めての場所へ到着するだけでも、引きこもりの私には一大事であるのに、初めての工場さんで、触ったこともないミシン

自分の縫ったところの不備を、お借りしているミシンでお直しするなんて、どうしてそんなことを言ってしまったのか、冷や汗ダラダラでした。

何とか縫い終えて、その場にいる方に謝り倒したら、社長室に案内され、社長直々に
「あなたの縫い方に甘さがある」とお叱りを受けたのでした。

たぶん、その時のことで台衿シャツカラーの縫い方を、もう一度取り組み方から研究し直しをするきっかけになったんだと思います。

やっぱりダメージは研究心に火をつけますよね。
だって、二度とそういう思いをしたくないですもの。

あの時のミシン場の方々の、ミシンのガーガガガガガーーー!!!という音、また小バサミのガチャン!!!という音ほど、危機迫って感じたことはありません。

音にビビりまくってミシンを踏む恐怖。

しかも縫い直しなので、細く切り落とした縫い代をほどいて縫うのですから、体中の毛穴から水が出ていくような悲壮な思いで、

サッサと終わらせないと!と叱咤しつつ

急いでやって、これ以上失敗したら台無しだ~~と気を引き締め

震える手で、ハンカチで汗を拭き取りながら、必死でしたね。

タオル地のハンカチは、サンプルを縫う時に手元に置いて、時々手を拭き取るようにすると、気が付かない汚れをつけずに済みます。

社長室で脂汗の面談中、ハンカチだけは、褒められましたね(笑)
もちろん縫物を仕事としているのに、ハンカチだけ褒められるという恥ずかしさに、倒れそうになりました。

量産工場のメーカー見学

量産工場も怖いときはすごく怖いムードになります。

不具合で生産がストップしてしまったり、お直しで全員でほどくときとか、強烈なときけっこうあります。

ただ、メーカーさんが見学に来られるときは、一番追い込みの時は外してくれますし、工場側は時間や状況に追われているときは見学をさせません。

メーカーの見学があるときは3日くらい前から社長より通達があって、ミシン回り、床など事前に清掃して厳粛にお迎えモードになる訳です。

「メーカーさんがいらっしゃるときは、緊張感も漂わせながら明るくハキハキした態度で…」など、朝の朝礼でも訓示があります。

私が量産工場で修業をしていた時に、メーカーさんが見学に来た時のエピソードがあります。

「この工場は素晴らしい!」と褒めてもらったそうです。

その時は、ステッチのあるパンツの製造をしていました。

ステッチをかけている人が昼休みになって、自分の縫ったものをほどき始めたのを質問したのだそうです。

①どうして【ステッチ】をほどいているのか?
②なぜ、昼休みなのに休まないのか?

  1. ステッチを縫っていたら、途中で下糸がなくなって切れしてしまいました。
  2. ステッチが全部続けてできなかったから、途中から付け足しをしないで、元の位置までほどくのです
  3. 昼休みにはなったけど、1着なのでラインに遅れたりしないように、これだけ先にほどいてから休もうと思いました。

その答えにメーカーの方はとてもご満足して帰られたそうです。

ステッチを途中で継ぎ足しをしていい場所は、パンツなら股ぐりのところくらいでしょうか。

縫い代があるところでした、ステッチの継ぎ足しをしてはならんと、厳しく言われていました。
スカートなら脇の縫い目、もしくは切り替えの縫い目の場所ですね。

既製品を買うと、ステッチがど真ん中で継いであるのがあったりして、残念な気持ちになります。

私の子供はハンドメイドに興味があって私の動画もよく見てくれています。

でも、ステッチが途中から継ぎをしてあっても【そういうもの】と感じて、全く違和感を覚えないと言っています。

ステッチの継ぎ足しに違和感を感じるのは、業界人だけということなのかもしれないですが、もったいない事です。

ステッチは全部を一気に縫ってあるシュッとした感じが、既製品ぽさになります。
メーカーの人も大満足するくらい、ステッチにも気を配ってある商品はちゃんとした印象を受けます。

ステッチをほどけない時は、返し縫いで上からガガガ!とミシンをかけて、またリスタートする。

この返し縫いのところをしないで、中で結わいて見た目に一気に縫ったかのように見せ、ほどけないようにしっかり縫う方法など

ステッチが途中で切れたときには、

  • ほどく場合
  • ほどかないで結わく場合

二択で処理します。

素材や条件、その時の事情など考慮してどちらかを選びます。

条件の中に、「ほどきたくない」「だるい」という自分の事情はダメですよ(笑)

デザイン的に結わいてもいいとか、場所がほどかないとまずい場合などを考えます。

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